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洋楽文化史研究会 例会記録
2008年度 第47〜51回

2009年3月22日作成

第47回例会
  2008年5月18日(日) 13:30〜 東京大学駒場キャンパス
   研究報告:吉原潤「オーケストラにおける戦中-戦後の連続・断絶〜東宝のオーケストラ構想と戦後の展開を中心に」
  *例会後に総会開催
【報告要旨】
 日本のオーケストラにとって、敗戦という区切りをはさんだ戦中-戦後は連続・断絶、どういう関係を持っているのであろうか。今回はその連続面を考察する一例として、東宝交響楽団(現・東京交響楽団)を取り上げたい。東宝交響楽団は、創立は戦後であるが、東宝による構想そのものは戦中にさかのぼり、戦況の悪化により部分的実現のみにとどまったものが、戦後に本格的に実現したという経緯があるからである。今回はその戦中からの構想をたどるとともに、東宝が戦後に東宝音楽協会を設立して、その中核に東宝交響楽団を据え、積極的に音楽事業を推進し、戦後復興期の音楽文化に寄与したことを明らかにしたい。
※時間的に可能であれば、東宝音楽協会の活動がうかがえる映像として東宝の映画「幸運の椅子」を紹介したいと考えています。
第48回例会
  2008年6月21日(土) 14:00〜 早稲田大学本部キャンパス
   書評:戸ノ下達也『音楽を動員せよ――統制と娯楽の十五年戦争』(青弓社、2008年2月)
    報告者:上田誠二、塚原康子(非会員、東京芸術大学)
    コメンテーター:高岡裕之
   ※日本現代思想史研究会との合同開催。著者出席の予定。
第49回例会
  2008年7月12日 14:00〜 東京大学駒場キャンパス
   研究報告:永原宣「評論家としての検閲官:戦前・戦中期における<流行歌>をめぐる言説と小川近五郎」
【報告要旨】
 1934年の改正出版法の成立以後、内務省警保局レコード検閲室主任の小川近五郎は、流行歌検閲に携わっただけではなく、音楽雑誌や著作などを通して、自らの検閲官としての体験や考えを積極的に外部に発信していった。今回の報告では、これらの小川の議論や、出版警察報などの内部資料から浮かび上がる、戦前・戦中期における流行歌検閲の実態を考察する。同時に、小川の論点と、レコード検閲開始以前から、レコード制作関係者、音楽評論家、社会研究者などの間で巻き起こっていた、流行歌の是非をめぐる議論と照らし合わせることによって、国家による検閲という権力行為と、その外部における言説との関連性及び共犯性を明らかにしたい。
第50回例会
  2008年11月17日(月) 18:00〜 東京大学駒場キャンパス
   研究報告:李京粉(イ・キョンブン)氏(非会員)
    「時流に棹さして:第三帝国における「日本人音楽家」安益泰(アン・エキタイ)」
安益泰=R.シュトラウスに師事した朝鮮出身の作曲家・指揮者。第2次大戦下にヨーロッパで「日本人音楽家」として活躍。現在の韓国国歌の作曲者。
   ※討論言語:ドイツ語、日本語、韓国語(必要に応じて通訳)
   ※東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻比較文学比較文化研究室と共催
   ※チラシ:画像あり文字のみ(いずれもPDF)
第51回例会
  2008年12月6日(土)14:00〜 日本大学文理学部
   研究報告:袴田麻祐子「浅草オペラの諸相から 大正末〜昭和初期の西洋文化をめぐる思惑」
【報告要旨】
 浅草オペラを「文化」として見直す動きは近年さかんになってきている。浅草オペラが長らく被っていた「本格オペラ導入以前の未熟な試み」「上演・観客ともに質の低い音楽演芸」という評価と、それゆえの無関心・蔑視に異をとなえ、政府主導の唱歌教育ではなしえなかった『洋楽の広く一般への浸透』という目的に大きく貢献したこと、後の日本における本格的オペラ運動に関わる人々を数多く輩出したことといった点が、浅草オペラ再評価のアピールポイントとされるのが常だといえよう。そうして主張される内容それぞれにはおおむね賛同できる。が、この主張だけではやはり浅草オペラは『本格オペラ受容の前身』という評価構造から免れることができていないのではないか。
 発表を通して、浅草オペラに関わったさまざまな思想の交錯を整理し、またそうした交錯が生まれた背景を確認することで、「正統派オペラ受容史」と切り離すべき部分を精査し、現象としての浅草オペラ(あるいはそれをとりまく文化観のありかた)を近代日本文化史のなかに位置づける方法を検討したい。